こんにちは、TAUです。
先週、今週とドイツは天候が悪いです。
特に昨日からハリケーンが接近してきており、ドイツ全土の交通がマヒしています。
これ以上ひどくならないように祈りつつ・・・
さて、本日はちょっとセンシティブな問題について。
足元中国で広がっている新型肺炎の報道が、こちらドイツでも連日行われています。
ドイツのお隣フランスやイタリアでは、市民のアジア系に対する差別的な行動が、日本でも報道されていますが、先日私もフランクフルトでその目に遭いました。
初めて自分が直面した差別。
どうしたらそんな状況を無くすことが出来るのか、今日は考えてみたいなと思います。
地下鉄での出来事

先週末、妻と一緒に、フランクフルト中心部に買い物に行っていました。
新型肺炎が拡大しているという報道があるものの、市内の様子は普段と変わりなく、皆週末を楽しんでいます。
行きつけのアジア食料品店をのぞいてみましたが、客足が落ちることもなく、いつも通り盛況だったので一安心。
買い物も終わり、自宅の最寄り駅まで地下鉄に乗ったのですが、そこで事は起こりました。
私たちが地下鉄に乗り込んだ後、12~15歳くらいの白人のティーンエイジャーが乗ってきました。
彼らは私たちの顔を見るなり、「咳をする真似」をして、さらに「コロナ」という単語を残して車両を移動していきました。
余りにも唐突で、何が起こったのか分からなかった。。
数秒して、私たちに向けてされたことなんだなと理解しました。
急に体が熱くなりました。。
さらに私からは死角にでわからなかったのですが、妻曰く、その様子を見ていた高齢の夫婦が、私たちを見てニヤニヤ笑っていたそうです。
急に周りの乗客の視線が気になりだし、汗をかきながら地下鉄を降りました。
急なことで驚きましたが、妻はかなりのショックを受けたようでした。
ドイツではあまり感じたことはなかった
よく欧米に海外旅行に行った日本人が、アジア系だから話を聞いてもらえなかったとか、レストランで席を端っこにされたとか、そんなエピソードは巷に溢れています。
でもここドイツに限っては、昨年7月に引っ越して以来、そういう雰囲気はあまり感じたことはありませんでした。
フランクフルトという全世界の人が交差するような都市だったからかもしれないし、ドイツという国が移民受け入れに(ほかのEU諸国に比べて)割と寛容だからかもしれない。
もしかしたら歴史的(第二次世界大戦の)な背景に裏打ちされているのかもしれない、
などと考えていました。
12月からドイツで仕事も始め、税金や年金も収めるようになって、ドイツ社会の一員になれたような気がしていましたが、これも私の勝手な思い込みだったのかな。。。
結局彼らの中には「白人」というアイデンティティが存在して、それ以外の人たちを下に見ているのかな、、など今まで考えたことが無いような、モヤモヤしたネガティブな感情を持ってしまいました。
全員がそうじゃない!
そんな暗い気持ちで迎えた月曜日。
私の職場はフランクフルトから少し離れているので、ある程度の時間電車に乗って移動するのですが、週末のことがあり、周りの目が気になって落ち着かない。。
隣に人が座らないのは自分がアジア系だからだ。
こっちを見ているのは自分がアジア系だからだ、と思ってしまったり。
正直、初めてフランクフルトに来た時よりもビクビクしてしまいました。
職場に着いて
そんな中、職場のドイツ人の同僚たちの反応をみて安心しました。
彼らは避けるでもなく、特に気遣うでもなくいつも通り。
ランチの時に新型肺炎のことが話題に出たのですが、同僚たちは「よっぽどインフルエンザのほうが怖いよ」と。
流行地から離れているということもあるのかもしれませんが、非常に冷静な反応。
私の職場には医務室もあるのですが、そこに詰めている看護婦さんとたまたま廊下で立ち話をした時も、
「いまパニックになる必要はないのよ。やっぱりインフルエンザのほうが怖いから」と言っていました。
要は普段通り、何も変わらない職場でした。
スーパーマーケットで

さて、仕事が終わり職場のそばのスーパーマーケットに買い物に行きました。
エリア的に地元の人が多く、(ドイツ人から見た)外国人はほとんどいないので、私は結構目立つのですが。。
買い物をしていると、荷物を持ったおばあさんから、「あの棚の商品を取ってもらえますか?」と声を掛けてもらいました。
彼女からしたら、たまたま私が近くにいたから普通に声を掛けただけだと思うのですが、その一言がとてもうれしかった。
別に避けるでもなく、一番近くにいたからという理由で、ほかのドイツ人と同じように扱ってもらったこと。
普通といえば、本当に普通のことなのですが、ちょっと心がささくれ立っていた私には沁みました。
会社のそばの中華料理屋さん
会社のそばに、その街で唯一の中華料理屋さんがあります。
そのお店が気に入っていて、よくそのお店でランチをするのですが、この状況でお店に人が入っているか気になっていました。
でも、ここも普段通り。
地元のドイツ人たちも中華だからと避けるわけでもなく、食事をしています。
この前は帰りがけに、お店の人に「日本人ですか?」と聞いてもらえました。
そして「日本語で”Danke”は何て言いますか?」と。
「日本語では”ありがとう”と言いますよ」と教えてあげました。
こんな些細なやりとりだけでも、人間の心というものを実感できました。
私たちはどうするべきか

冒頭の様に、ネット上では「新型肺炎のせいで、アジア人なのに(または日本人なのに)海外で差別された」というニュースをよく見るようになりました。
そしてそのニュースについているコメントも、「結局欧米人はアジア人を下に見ている」とか、「中国人のせいで」とか、よりお互いの亀裂を広げるようなものばかり。
確かにフランスではアジア人狙いの強盗が増えているなど、人種間の差別を煽るような事件も起きています。
でも普通の、人として至極まっとうな良心を持った人が大半だと思います。
私たち日本人がネット上のニュースやコメントに煽られて、「これだから欧米人は!」という意見を持ってしまうことは、自分たちの良心を失ってしまうことに他ならないと思います。
そして忘れてはいけないのは、一番苦しんでいるのは中国の人ということ。
「自分たちは日本人だから!中国人じゃないから!」と言うことは、自分自身を安全圏に置きつつ、差別していることに他なりません。
ジャイアンにいじめられそうなスネ夫が、のび太のことを告げ口するような、そんな構図。
当然コロナウィルスは脅威になりますし、新型肺炎で亡くなっている方もいて恐怖が世界を覆い始めていると思います。
でも一番怖いのは、この一件を契機に人々の間の亀裂が深まっていくことじゃないでしょうか?
次に同じようなことがあったら、”Warum?”(ドイツ語で「なぜ?Why?」)と聞き返してみようと思います。
たとえ草の根運動でも、ウィルス(ごとき)に人間の絆を壊されたくないから!
それでは!